Tokyo, Japan
Masahiro Harada + MAO
シハラの店舗を手がけるのは4作目になる。これまでもそのジュエリーのフィロソフィーと同様に装飾を、もっと言えば人為を消去するようにしてデザインしてきたけれど、今回はそれを突き詰めていった結果、遂には店舗さえ消え去り、都市空間だけが残った、といった状態になってしまった。通常なら商品を中心に、それを包む店舗という空間があって、その更に外側に都市があるものだが、ここでは、商品であるジュエリーは都市空間にそのまま露出しているかのようだ。
雑多で騒々しい世界の只中に、純粋に理知的なプラトン立体が浮かんでいる、というコントラスト。またその知覚が、コンクリートやアスファルトといった都市のラフな質感を背景として、どこまでも滑らかにポリッシュされた金という物性によって現象している、というコントラスト。
そんな抽象的階層と具象的階層という対照的なレベルに跨った二重のコントラストが、シハラのジュエリーの美的強度を生んでいるのだとしたら、都市とジュエリーの関係は、店舗空間という緩衝材などは挟まずに直接にしてしまった方が良い、そう考えた結果である。
実際のデザイン操作について述べると、L字型の建築によって囲われた小さなポケットパークのような都市空間を北と東に隣接するテナントスペースに拡張し、加えて北側の空間は西側から直交してくる路地の延長として捉え、それを引き受けることを考えた。だから室内であっても使用される素材は、都市を構成するコンクリート平板やセメント程度に抑制される。それでも最小限必要になる展示什器などは、高透過ガラスをストラクチャーシールで組み上げ、なるべく金物は使わないことでその存在を消し去ることを意図した。その結果、一方が袋小路の十字路のような、室内外を跨いでの都市的な環境が生まれたわけだ。
実を言えば、このテナントビルは10年ほど前に私たち自身が手がけた建築で、高額な賃料が期待できるストリートフロントを削ってでも小さなポケットパークを生み出したのは、商業に必要なのは都市空間であるとの主張だった。今回のプロジェクトでその都市空間は拡大されたことになる。この敷地界隈のような商業施設で埋め尽くされた街では、都市空間という空隙をいかに獲得し、配分していくかが、これからのデザインの本分になるようのではないか。そして、ブランドというものが都市を背景にその価値が発生するのだとしたら、都市空間そのものを商業空間とすることは適切だろう(そこが「都市」でないのだとしたら、その「代替」としてのインテリアは必要かもしれないが)。商品と都市の関係を、人が直接に感じ、評価できる状態。私はそれを新たな「店舗」と考えているのかもしれない。
This is the fourth store we have designed for Shihara. We designed all previous spaces by the method of elimination based on Shihara’s philosophy. Conventionally, a store would consist of product displays surrounded by a store within a city, however, for Shihara Tokyo, we pushed the concept further by exposing the entire space to the surroundings. Products float in the center boxed in a glass wall as if they were a part of the city landscape. The space offsets the chaotic and turbulent world with clean sculptural glass windows against polished gold jewelry in the midst of rough textures such as concrete and asphalt. Shihara jewelry’s appeal lies in the contrast between the abstract and figurative levels. The relationship between the city and jewelry should be direct, without a store coming in between them.
We limited the use of materials to concrete slabs and cement that make up a city so that we could visually extend the urban space-like a courtyard enclosed by the L-shaped architecture. The minimal display fixtures were intended to be as invisible as possible with high-transparency glass and structural seals, using as little hardware as possible. As a result, the space straddles the interior and exterior, as if one side of the building were a crossroads of cul-de-sacs.
Coincidentally, this building was designed by our studio a decade ago. To acquire and distribute urban spaces in a city filled with buildings is the essence of design of the future. If the value of a brand is generated against the backdrop of the city, it would be appropriate to use the urban space itself as part of the experience, where one could feel and evaluate the relationship between products and the city. I believe this is a new way of creating a store.
SHIHARA TOKYO
東京都港区北青山3-12-13 北青山3丁目ビル 1F
03-6427-5503
SHIHARA TOKYO
3-12-13 Kita-Aoyama 1F, Minato, Tokyo
03-6427-5503